7/5オンライン・イベント 「アプリと市民の力でつくるアクセシブルなまち ~インドで始まった挑戦~」のご報告

7月5日(土)にスリニさん(2010年国際研修参加、障害者協会(APD))所属)が
最新の活動をシェアするオンライン・イベントが行われ、
13か国から50名近くが参加しました。
どんな活動が報告され、参加者からどのような質問が寄せられたのかをご紹介します。
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イベントの背景
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イエス・トゥ・アクセス(YTA)アプリは、約半年前にインドで導入され、
すでに約9,000人が利用しています。
スマートフォンで出入口やスロープ、トイレなどを撮影すると、
AIが傾斜や幅を自動で分析し、結果はGoogleマップ上で共有されます。
ユニバーサルデザインの提言や日々の移動計画にも活用できる実用的なツールです。
このアプリの普及をリードしてきたのがスリニさんです。
彼のチームはインド国内での拡大を進める一方、他国への展開にも関心を持っています。
インド国外での導入には技術や予算の課題がありますが、
現地での強いニーズと協力があれば可能性があります。
スリニさんはAHIに相談し、アジア諸国での連携の可能性を探りました。
AHIはバングラデシュの「開発障害センター(CDD)」に協力を依頼し、
サラムさん(2023年研修参加)とジャヒンギールさん(2016年研修参加)が、
今回のオンラインワークショップの企画・運営を支援してくれました。
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報告 第一部:障害とは? アクセシビリティとは?
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スリニさんの報告は、「障害とは何か」を考えることから始まりました。
実際の事例や写真を用いながら、障害とは本人の身体的・精神的な状態そのものではなく、
社会の中にあるバリア(障壁)と組み合わさって生まれるものであることを確認しました。

バリアには物理的なものだけでなく、社会的、態度的、文化的、制度的、法律的なものもあり、
それらが絡みあって、人びとの参加や社会への包摂(インクルージョン)を妨げています。
スリニさんは、「アクセシビリティ(利用のしやすさ)」は、
建物だけでなく、次のような分野にも広く関係していると強調しました。
- デジタル・アクセシビリティ(ウェブサイト、アプリ、オンラインコミュニケーションなど)
- 移動のアクセシビリティ(交通機関、駅、空港など)
- サービスのアクセシビリティ(教育、仕事、医療など)
たとえば、ある人が学校をやめたり、仕事を失ったり、日常生活から排除されたりするのは、
その人の障害のせいではなく、社会がその人のニーズに対応していないことが原因です。
反対に、環境をアクセシブルにすれば、自尊心や尊厳、社会への参加を促すことにつながります。
障害のある人だけでなく、高齢者、妊娠中の人、小さな子どもを連れの人、
足腰に不安のある人たちにも役立ちます。
統計に基づくと、インドの人口の約48%が、
アクセシビリティの改善によって恩恵を受けられる可能性があると考えられます。
アクセシビリティは、一部の人のための特別な配慮ではなく、
すべての人にとって必要な「基本的な権利」のひとつであることを、
政策決定者に理解してもらうことが重要です。

第一部で寄せられた質問
Q:アクセシビリティと合理的配慮の違いは何ですか?
A:アクセシビリティとは、環境・サービス・情報などを
最初からすべての人にとって使いやすく設計することを指します。
基本的に恒常的な(持続的な)対応です。
一方、合理的配慮とは、特定の個人のニーズに応じて、個別に調整を行うことです。
これは一時的または状況に応じた対応であり、本人からの要望に応じて行われます。
Q:アクセシビリティとユニバーサルデザインの違いは何ですか?
A:ユニバーサルデザインとは、年齢や障害の有無、その他の違いに関係なく、
すべての人が使いやすいようにモノや環境を設計する考え方や方法のことです。
つまり、ユニバーサルデザインはアクセシビリティを実現するための
設計理念やアプローチであると言えます。
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報告 第二部:イエス・トゥ・アクセス アプリ/キャンペーンとは?
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スリニさんは、インドをはじめ多くの国々で、
「どれくらいの公共スペースがアクセシブルか」「逆に、どれくらいがアクセシブルでないか」
といった信頼できるデータが不足しているという課題を指摘しました。
インドには障害者権利法(2016年)や「アクセシブル・インディア・キャンペーン」などの
法制度があるものの、実際の改善は遅れており、関係機関の連携も十分とは言えません。
アクセシビリティに関する監査も、多くの場合は手作業で行われ、
結果は公表されることなく政府のファイルにしまわれているのが現状です。
この課題に対応するため、APDは「Yes to Access(YTA)」アプリを開発しました。
これは、公共建築物のアクセシビリティを評価・可視化するスマートフォン・アプリです。

AIと画像認識の技術を活用し、専門的な知識がなくても、
スロープ、トイレ、手すり、標識などの特徴を写真で記録できます。
アプリは29の主要なチェック項目をもとに、施設を1〜5の星で自動評価し、
その情報はGoogleマップのような地図上で一般公開されます。
この6ヶ月間で、インド各地で9,000人以上のボランティアが18万件を超える監査を行いました。
これは政府機関、NGO、学校、地域住民グループとの戦略的な協力によって実現しました。
YTAアプリから得られたデータは、以下のようにさまざまな場面で活用されています。
- 障害のある人やその家族が、アクセスしやすい場所を事前に調べて訪問の計画を立てる
- ホテルや映画館などのサービス提供者が、施設改善の参考にする
- 社会福祉団体やNGOが、政策提言や地域改善のための根拠として使う
YTAアプリは現在インドのみで利用可能ですが、
APDは、強い関心と協力体制があることが確認できれば、
他国でもこのツールを適用するために国際的なパートナーと協力する意向があります。
スリニさんは最後に、参加者に対し、「共感するだけでなく、ぜひ行動を!」と呼びかけました。
ボランティアとしてアクセシビリティ監査に関わること、情報を共有すること、
地域での働きかけをすることなど、誰もが取り組めることから始めてほしいと伝えました。
「地域社会を本当にインクルーシブにするためには、一般の市民が関わることが不可欠です」
と語りました。
第二部で寄せられた質問
Q:YTAアプリはインド国外でも利用できますか? インドの携帯電話番号がなくても使えますか?
A:現時点では、YTAアプリはインド国内のみで利用可能で、
登録にはインドの携帯電話番号が必要です。
ただし、現地での強い関心と協力体制が整えば、他国での利用も技術的には可能です。
その際は、言語の翻訳、法制度の調整、データ管理の技術インフラ整備などの
ローカライゼーションが必要となります。
Q:YTAアプリの特徴は?他の類似アプリと何が違うのですか?
A:YTAアプリは、ユーザーが撮影した写真をもとに、
AIがスロープの角度や入口の幅などの使いやすさを分析し、
29の項目に基づいて星(★)評価を行います。
この評価はGoogleマップのようなインターフェース上に表示され、誰でも閲覧できます。
写真とユーザーの入力を組み合わせた、信頼性の高いデータが得られる点が特徴です。
Q:道路や移動ルートも監査できますか?
A:アプリが対象とするのは、建物の入口、トイレ、手すり、標識などの
建築物内部・周辺の施設です。
道路や歩道、移動ルートなどの屋外経路の監査は対象外です。
Q:すでに評価された場所を再度監査できますか?
A:はい。状況の変化を反映し、データの正確性を高めるためにも、
時間をおいて同じ場所を再度評価することが推奨されています。
Q:自分の所属する団体が実施した監査件数などを追跡できますか?
A:はい。団体ごとにクーポンコードを発行することで、
実施件数などの活動データを追跡・集計することが可能になります。
Q:特定の場所の詳細なアクセシビリティレポートを受け取ることはできますか?
A:アプリ自体では詳細なレポートは自動生成されませんが、
希望があればYTAチームが該当データを提供することができます。
特にクーポンコードを使って監査を行えば、そのデータを元にレポートを作成できます。
Q:アプリで集めたデータは誰が分析し、どう活用されますか?
A:YTAアプリのチームは、必要に応じて生データや要約されたデータを提供できます。
ただし、そのデータをもとに実際に改善を求める働きかけを行うのは、
ボランティアや協力団体など、現場で活動する人々が担うことになります。
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実用的な活用を想定した質問が多く寄せられました。
何人かの参加者は、インド国内はもちろん、国を越えてYTAアプリを活用し、
アクセシビリティ改善に取り組みたいという意欲を示しました。
今後、スリニさんのチームは、
地域別・国別に協力体制を築くための話し合いを進めていく予定です。
職員 髙田


