アメリカの対外援助停止、そして、カンボジアの研修生

アメリカの大統領令により、政府の海外援助への資金拠出が停止されてから3か月。
アメリカは世界最大の援助国です。その資金が急遽、止まりました。
その影響を大きく受ける国のひとつとして挙げられているのが、AHI元研修生たちも多くいる、カンボジアです。

そのカンボジアで、HIV感染者の支援をしているAHIの研修生キムさん(2017年国際研修参加)から、近況をしらせるメッセンジャーが届きました。

「カンボジアの保健、教育、HIV・エイズ関連のとりくみは、大きな打撃を受けています。私たちは、2017年のトランプ大統領の前任期中も、同じことを経験しました。その時、私の団体の資金はゼロになりました。それ以降、他からの資金を得る努力をしてきました。大統領令が出た時点で、アメリカ政府系の資金は運営費全体の30%。活動を止めるような大きな事態には至っていません」

過去の経験から、アメリカ政府系資金からの依存脱却を進めていたようです。
他の国の研修生からも、同じような声をきいています。

最前線で活動する研修生たちにとって、今回の出来事は突然おきたことではなく、
いつでも起こり得る常に目の前に現れていた課題であり、それへの日々の地道なとりくみがあったのだと、あらためて思います。

そして国際レベルでも、アメリカの穴を埋める動きが始まっています。

キムさんからの報告は、たんたんとした短いものでした。
ですが、
わたしたちひとりひとり誰しもが、「無策な弱いひと」ではなく、どんな経験からも学び、次に向けて一歩を踏み出し、新しい道を創っていく力があるのだと、
そして、AHIはAHIの場所から道をつくり、いつかそれが他の道と交差し大きな道となるよう、それぞれの場で、あきらめずに歩き続けていこうよ、と、
力づよく、私を、励ましてくれました。

写真:

キムさんがAHIの国際研修後にとりくんだのは、HIV感染者を中心に、障害者、性的少数者、少数民族出身の人など地域の少数派の人たち、その家族、保健ボランティア、教師、コミューン(集合村)長、郡の職員など、さまざまな立場の人たちがメンバーとなる、地域(郡)ごとのワーキンググループづくりです。このグループが、HIV感染者が抱える課題の解決を話し合い、プランをつくり、実行していきます。写真は、そのメンバーの人たち。キムさんの団体が支援を終えた後も、3つのワーキング・グループが、活動を続けているそうです。

今、キムさんが考えているのは、このモデルを他地域でも応用していくこと。ですが、まったく同じことをするのではありません。先の経験から、HIVに感染した子どもや若者の多くが、差別や偏見から学校をドロップアウトしてしまうことに気づきました。子どもと若者のHIV感染者にフォーカスしたワーキング・グループをつくり、そのグループが活躍する場を耕していく。それが彼の次のチャレンジです。

キムさん(右)。団体長のシエンホンさんと。

職員 清水香子