「私の」から「私たちの」へ

AHIを長年支えてくださったSさんがお亡くなりに
なりました。お見かけするときはいつもきれいで
快活で、80歳後半とは思えない方でした。
英会話の教室を長年開かれて、教え子の子どもたちと
AHIのイベントに参加してくださったことも何度か
ありました。戦争のとき、疎開をされた経験を語り部と
して積極的に語り、毎年日進市で市民と行政の協働
で開かれている「にっしん平和の集い」でも中心的
なお一人でした。

元AHIの職員が、「戦争の体験は、それぞれの人に
よってずいぶん違う。自分が経験したことがすべてに
なってしまったりするのよね」と話していたことが
ありました。
私の父も母も兄弟が1人戦死していますが、本人たち
は田舎ぐらしだったせいか、空襲の大変さとか
聞いたことがありませんでした。

苦しく大変であればあるほど、「自分が体験したこと」
が「すべて」になりやすく、そこから出て、広く想像力を
持つことは容易なことではないと思います。

新型コロナウイルスの感染で、様々に困難な状況が
世界各地で起こっています。このグローバルな難局
が一日も早く解決することを願いますが、そのとき
私たちはどんなふうに想像力を広げられるのだろうか。
「正しい」情報を得て自主的に行動する。通常であれば
そんなあたり前のことが簡単ではないと感じさせられる
毎日です。今をとらえ、考える、そして記憶しておくことも、
将来のためにできることかも。
Sさんの訃報に接し思ったことです。

職員 はやしかぐみ
写真はいずれもパキスタンの元研修生から。
上:女性たちの識字クラス。情報を得て考えるために。
下:男性たちが集まった平和のための研修会