日本政府の対ミャンマーODAの停止を求める要請書に賛同しました


(画像:FoE Japan ウェブサイト https://foejapan.org/issue/20230929/14499/ より)

2021年2月1日にミャンマーで軍がクーデターを起こしてから2年8ヶ月が経とうとしています。

クーデター以降、軍によって殺害された人は4000人以上。そして2万人近い人たちが不当に拘束されたままです。国内避難民は190万人以上にも上っています。今もミャンマー軍は各地で空爆を続け、多くの民間人が犠牲になっています。

この軍の資金源となる懸念が指摘されているにもかかわらず、日本政府のミャンマーへの開発援助事業は続いています。これまでにも日本のNGOが繰り返し要請してきた内容ではありますが、改めて、5つの団体が呼びかけ団体となり、日本政府に対して、対ミャンマーへの政府開発援助の停止を求める要請書を提出しました。AHIも、これに賛同しました。

要請文は下記、もしくはコチラ→ http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20231003.pdf
また、外務省前でのアクションも行われました。その際の様子はコチラ(FoE japanウェブサイトより)
https://foejapan.org/issue/20231004/14525/

ガザでも深刻な状況が続いています。
AHIは、誰もが尊重され健康に暮らせる公正な社会を目指して活動する団体です。
武力や暴力による人権侵害、市民の声に基づかない非民主的・不公正なあらゆる手段の行使や状況に対し、声を挙げとりくむ人びとの側に、常にたっていきたいと思います。

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2023年10月3日

内閣総理大臣 岸田文雄 様
外務大臣 上川陽子 様

【要請書】改めて日本政府の対ミャンマーODAの停止を求めます

ミャンマー軍によるクーデターから2年8ヶ月が経過しましたが、同軍は戦争犯罪と人道に対する罪にも相当する深刻な人権侵害を続けています。ミャンマー軍によって殺害された人は、2023年9月26日時点で確認されているだけでも民主派活動家や民間人を含め4,120人にのぼります1。軍の実力行使による権力奪取に対し抗議する人びとのうち、恣意的に拘束された、または非合法軍政によって逮捕状が発行された人は24,844名です2。ミャンマー全土では190万人もの人が国内避難民となっているとみられますが(9月8日時点)、このうちクーデター以降に新たに避難民となった人は、およそ160万人です3

日本政府はミャンマーと2020年までに累計3,565.18億円の無償資金協力、1,099.49億円の技術協力を供与し、1兆3,784.72億円の有償資金協力(借款契約ベースの金額)を約束しています4。これら政府開発援助(ODA)に係るクーデター後の対応については、2021年5月21日に当時の茂木外相が記者会見で「このままの事態が続けばODAを見直さざるを得ない、あるいは、民間企業が投資したくても投資できなくなる可能性がある」と述べたものの、その後、大臣や外務省からは「我が国や国際社会による取組の状況を見ながら、どうした対応が効果的か、総合的に検討する」との回答が繰り返されているだけです5。ODAの新規案件の契約は行われていませんが、既存案件についてどのような見直しや検討があったのかに関して、公式な発表は一度もされていません。

ミャンマーに提供されるODAで、大きな比率を占めてきたのは、経済特別区開発や周辺のインフラ整備、道路建設、鉄道改修などを実施するための有償資金協力(円借款)です。現在実施中のものは34案件あり、借款契約ベースでは7,396億円の金額にのぼると外務省は国会で答弁しており6、クーデター後もこれらのODAを継続していることが明らかとなっています。

既存のODAの継続は以下のような問題をはらんでいます。

第一に、既存のODA案件については2021年2月のクーデターにより契約先が消滅したにもかかわらず、二国間の国際約束を伴うODAを継続していることで、日本政府がクーデター後の軍事支配体制を暗黙に承認しているように見えることです。これに対しては、ミャンマーの市民から強い懸念が出ており7、我々もその懸念を共有するものです。

第二に、ODA事業が実際に軍を利する場合があることです。ミャンマーでは軍系企業の事業からの収益が軍の資金源となり、残虐行為の実施を支えていることが、国連の独立調査団の調査で明らかとなっています8。円借款事業のバゴー橋建設では、上記の国連調査団が「関係を持つべきではない」と国際社会に勧告してきた軍系企業であるミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)が関与していることが明らかになっています9。また、バゴー橋建設事業に関わる横河ブリッジが2022年7月から11月にMECに対し支払いを行なったと指摘されています10。また、ティラワ経済特別区(SEZ)事業で、日本政府は大手商社と共にODAの海外投融資により工業団地部門を運営するミャンマー・ジャパン・ティラワ・ディベロップメント社(MJTD)に出資をしています。ミャンマー側もティラワSEZ管理委員会を設置しMJTDに10%出資しています。MJTDに利益があった場合には配当が支払われますが、クーデター後すぐに軍が管理委員会の委員長を拘束し、新たな人物を任命しており、事実上、軍が運営に関わっている状態です。この状況では、配当が軍を利する可能性は否めません。

第三に、ODAの支払いの大部分が日本企業に対するもので、ミャンマー軍の管理下に入るリスクはないと日本政府は示唆してはいますが11、実際には、ツーステップローンで日本政府が貸し出したODA資金がミャンマーの金融機関にプールされ、現地の銀行で管理される形のODA資金があります。「住宅金融拡充計画」、「中小企業金融強化計画」、「農業・農村開発ツーステップローン計画」などがそれにあたります。このような資金が、金融機関を支配下に置くミャンマー軍の管理下に入る恐れがあります。

第四に、有償資金協力はミャンマーが日本に返済しなければいけない「融資」であり、ミャンマーの人びとの負う債務を増大させます。既に2020年までの日本政府からの貸付累積額が27億6180万ドル12となっているミャンマーに、新たに7,396億円もの債務が追加されることとなります。上述のとおり、ミャンマー軍の資金源となっている、またはその可能性が十分にあるODAの返済を、ミャンマー軍による深刻な人権侵害に苦しむミャンマーの人びとに負わせることとなります。

昨年12月の要請でも主張した通り13、我々は日本政府がミャンマー国民統一政府(NUG)や民族革命組織(ERO)、ミャンマー国内の市民組織の声に耳を傾け、ミャンマー国民の利益のために効果的な支援を行うべきだと考えます。私たちは、日本のODAが軍を利することにより、日本が軍による人権侵害に加担する可能性について深い懸念を示し、日本政府が実施中のODA事業を人道支援を除いて一旦すべて停止することを再度、強く求めます。

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1 政治囚支援協会, "Daily Briefing in Relation to the Military Coup" (2023年9月26日).  https://aappb.org/?p=26312
2 同上
3 UNHCR, “MYANMAR EMERGENCY UPDATE as of 8 September 2023”
4 外務省ODA国別データ集(2021). p.20-21.
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/100384974.pdf#page=30
https://reliefweb.int/report/myanmar/myanmar-humanitarian-update-no-32-8-september-2023
5 第204回国会. 衆議院外務委員会(2021年4月14日). 自由民主党鈴木貴子議員の質問への原圭一外務省大臣官房参事官の回答。
ミャンマーの民主化を支援する議員連盟・「人権外交」を推進する議員連盟. 「ミャンマーにおける日本のODA・OOF事業、経済活動等に関する勉強会 (2022年2月1日)」での外務省回答。
第208回国会. 参議院外交防衛委員会(2022年3月16日). 日本共産党井上哲士議員の質問への林芳正外務大臣の回答。
第208回国会. 衆議院安全保障委員会(2022年4月26日). 立憲民主党徳永久志議員の質問への實生泰介、外務省大臣官房参事官の回答。
2022年度NGO・外務省定期協議会.「第1回ODA政策協議会」(2022年7月20日)でのメコン・ウォッチの質問に対する、外務省国際協力局国別開発協力第1課栗本首席事務官の回答。
6 第204回国会参議院外交防衛委員会(2021年4月15日). 日本共産党井上哲士議員への植野篤志、外務省国際協力局長の回答。
7 Progressive Voice, “Japan and Junta Make Dangerous Bedfellows”( Weekly Highlights July 11-17, 2022): https://progressivevoicemyanmar.org/2022/07/26/japan-and-junta-make-dangerous-bedfellows/
8 Fact-finding Mission on Myanmar, Economic interests of the Myanmar military (September 16, 2019): 
https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/MyanmarFFM/Pages/EconomicInterestsMyanmarMilitary.aspx
9 Myanmar Now, "Japan must abandon project with military-owned company to build bridge in Yangon, say engineers" (March 26, 2021): https://www.myanmar-now.org/en/news/japan-must-abandon-project-with-military-owned-company-to-build-bridge-in-yangon-say-engineers
10 ヒューマン・ライツ・ウォッチ. 「ミャンマー:日本政府の建設事業が国軍を利する」(2023年1月24日)
https://www.hrw.org/ja/news/2023/01/24/myanmar-japans-construction-aid-benefits-junta
11 第204回国会、参議院決算委員会(2021年4月12日)での立憲民主党石橋通宏参議院議員の質問へのJICA北
岡伸一理事長(当時)の回答で、「これは、どういうふうにお金が流れるかは精査いたしますが、基本的には、多くの、大部分は下請の日本企業の方に行くお金でございます」とある。
12 外務省 ODA国別開発協力実績アジア.
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/asia.html
13 メコン・ウォッチ他【要請書】 日本政府の対ミャンマーODAの停止を求めます(2022年12月5日)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20221205.pdf

呼びかけ団体
アーユス仏教国際協力ネットワーク
国際環境 NGO FoE Japan
日本国際ボランティアセンター(JVC)
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
メコン・ウォッチ

賛同団体(計30団体)
特定非営利活動法人APLA
FBはだしのゲンファンクラブ(非公式)
特定非営利活動法人HANDS
アジア太平洋資料センター
公益財団法人アジア保健研修所(AHI)
特定非営利活動法人アフリカ日本協議会
非営利活動法人アジア女性資料センター
(特活)アジア・コミュニティ・センター21
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
特定非営利活動法人 久留米地球市民ボランティアの会
地雷廃絶日本キャンペーン
シェア=国際保健協力市民の会
特定非営利活動法人 地球の木
一般社団法人日本ビルマ救援センター
公益社団法人 日本キリスト教海外医療協力会
日本山妙法寺
日本キリスト教協議会東アジアの和解と平和委員会
熱帯林行動ネットワーク (JATAN)
認定NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ
ふぇみん婦人民主クラブ
プロボス
ミャンマー(ビルマ)市民の訴えを聞く会
ミャンマーの今を伝える会
特定非営利活動法人Music Dream Creation
民派連
ミャンマー問題を考える会
一般財団法人ワークスペースエイジア
団体名非公開   3団体

本件の連絡先: メコン・ウォッチ
110-0016 東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F   電話: +81-3-3832-5034
E-mail: contact@mekongwatch.org

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職員 清水