2023年 インド出張記①

先週いっぱい(4/16~23)4年ぶりにインドに行ってきました。

北部のラジャスタン州のチャヤさん(2019年国際研修参加)が所属するNGO、Prayas(プラヤス)と

協働事業を始めるにあたり、現地の様子を確認し、関係者と会って話をするためです。

Prayasがどんな活動を、どんなふうにすすめているのかを知ることも目的の一つでした。

 

写真はチットルガー郡のガティヤワリ村の集会所。

この村と周辺の19村で、Prayasは2021年から社会保障事業を実施しています。

インドにも様ざまな社会保障制度がありますが、それを必要とする人たちにちゃんと届いていません。

まず、制度が周知されていません。

例え制度を知っていても、読み書きができなかったり、

申請に必要な書類がそろえられず、申請できないということも多々あります。

申請後の行政の仕事が遅いため、待てど暮らせど保障を受けられないということもあります。

 

そこでPrayasは、社会保障へのアクセスを高め、人びとの暮らしの質を改善するため、

村の住人のなかから地域人権擁護者を育成すると同時に、4つの住民グループをつくりました。

女性グループ、保健・衛生・栄養委員会、生活保護受給者グループ、農村雇用保障対象者グループです。

地域人権擁護者も4つの住民グループも、社会保障制度を村の人たちに周知し、

申請の手助けをすることを主な活動としています。

 

例えば女性グループは、寡婦年金や高齢者年金の受給対象者に働きかけたり、

妊産婦に女性と子どもの健康に関する情報を提供をしたり、

適切なケアサービスを受けられるよう保健・衛生・栄養委員会についないだりします。

誰かが保障やサービスを受けられるようになると、

それをきいた人たちが自ら女性グループに相談に来るようになったといいます。

時には、既存の社会保障制度の枠組みには合わない相談事もあります。

女性グループの手に余ることなら地域人権擁護者に相談し、

地域人権擁護者でも対応できないことはPrayasのスタッフに相談します。

 

Prayasのスタッフは「質問の力」を大切にしてきました。

みんなで地域課題を話し合うなかで、常に「その原因/理由は?」という問いを続けると、

「本当の原因/理由」がみえてきて、解決方法も何となくみえてくるといいます。

 

「質問の力」はグループワーク以外でも発揮されます。

ガティヤワリ村の地域人権擁護者のビンドゥさん(下の写真)は、

ある人から「保健センターで薬はないと言われて困っている」という相談をうけました。

ビンドゥさんが保健センターに行って職員に質問をしたところ、

薬がないのは、担当者が発注を忘れていたせいだと分かり、その場で注文させたそうです。

 

ビンドゥさんは、Prayasが行った新型コロナウイルスのワクチン接種キャンペーンで

ボランティアをしました。初めてのボランティア活動でした。

村の人ために働きたいという思いを強くし、キャンペーン終了後、

Prayasのスタッフに「私にできることがあればしたい」と申し出ました。

その後しばらくして社会保障事業が始まり、

Prayasスタッフはビンドゥさんに「地域人権擁護者をやってみないか?」と声をかけました。

 

地域人権擁護者としての活動には苦労もあります。

例えば、ビンドゥさんが年金の申請を手助けした人から、

まだ年金が口座に振り込まれないというクレームを受けることが何度かあったそう。

 

ある時は、その他のビンドゥさんのおかげで年金を受け取ることができた人たちが、

その人をなだめて、ビンドゥさんの労をねぎらってくれたそうです。

 

つい先日は、その人がひどく怒っていたので、

ビンドゥさんは年金相談ホットラインに電話をかけ、ハンズフリー通話にセットしました。

つまり、電話の向こうの担当者にその人の憤りを聞かせたのです。

担当者はすみやかに処理状況を確認し

「あなたの申請はちゃんと受理されて、年金振込の手続きが進んでいます」と説明したので、

その人は納得して帰っていったそうです。

 

興奮する人と、それに冷静に対応するビンドゥさんの絵が目に浮かびます!

 

職員 髙田