財政危機にあるスリランカから~ラマさんの苦悩

上記は、現在深刻な財政難にあるスリランカから、元研修生ラマさんが送ってくれた画像です。今、SNS(WhatsApp)で何万回もシェアされているとのこと。
訳すとこんな感じでしょうか。(シンハラ語はラマさんに英語に訳してもらいました)
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設問4 「私の国は」から始まる、短い文章を作りましょう
答え:
私の国はスリランカです。素晴らしい大統領がいます。彼の名前はゴタバヤ・ラジャパクサといいます。大統領はいつも「力を尽くした(Api Thama Hodatama Kare/We exactly did that)」といい、実行しました。そして、砂糖、石油、米、粉ミルクの値段を上げました。ドルの価格も上げました。今スリランカは破産状態です・・・さあ、お楽しみ?(Now pleasurable/Dan Sepada?) 」
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物価上昇、失業増加、燃料不足と長時間の停電。
現政党への抗議や大統領辞任を求める人びとの運動も日々、増しています。
この経済危機の大きな要因は、中国からの過剰な借金を繰り返してきたことだと言われています。
スリランカはこれまで、中国から借金をして、港湾などの観光開発や中国との貿易にかかわる各種インフラを建設し続けてきました。
その借金の額は、現在60億ドル(約6950億円)にのぼります。〔Vision Times誌 2022年1月7日付より〕
大統領は国民の生活向上のためと言って開発を進めてきましたが、どれも思った利益はあがっていません。運営権を中国に譲渡してしまったものもあります。スリランカ国民の益にはつながっていないのです。
コロナの流行による観光産業への打撃も、この状況の加速につながりました。
収益のないスリランカに、今、借金を返せるお金はありません。
今後一年間で、73億ドル(約8460億円)の国内外債務を返済しなければなりませんが、昨年11月の時点で、スリランカの外貨準備高はわずか16億ドル(1855億円)にすぎないそうです。〔同上〕
輸入していた燃料を買うお金もなく、苦肉の策で、紅茶の茶葉で支払うといった事態にも。
開発の影では、住民の生活空間は奪われ、生態系の破壊も行われてきました。
反対する住民の声も無視されてきました。
AHIの研修生たちも、このような住民たちを支え、ともに抗議し政府との話し合いの場を作るといったことを続けてきました。
画像を送ってくれた、ラマ(Odayan Ramachandran)さんもその一人です。
ラマさんは1987年にAHIの国際研修に参加しました。
同じタミル人として、紅茶農園で働く人びと(タミル人)を支援し、ともに活動してきました。
その過程で、シンハラ語も話せるようになりました。
シンハラ語とタミル語両方を話せる人は、まだそう多くはありません。
私が彼と会った2017年には、語学学校でシンハラ人にタミル語を教えて収入を得ながら、
仲間とともに、紅茶農園で働く人びとの支援を続け、
同時に、シンハラ人とタミル人の対話の場づくりや、行政に人権に考慮した開発を行うよう働きかける、といったとりくみをしていました。

2017年 語学学校でシンハラ人の行政職員に英語とタミル語を教えているラマさん

ところが今年1月、不況のために職を解雇されてしまった、との連絡がありました。
娘さんは大学進学をあきらめねばならない、とも。
上記の画像とともに送られてきた2日前のメールからも、ますます苦しくなる生活の様子が伝わってきます。
「悲しいニュースです。1キロあたりの粉ミルクの値段は1945ルピー(818円)、ガソリンは4150ルピー(1747円)になりました。」
「電車の切符は、昨日から50~60%も値上げされました」
そして、日雇いの仕事にいこうかと考えている、と。
けれども同時に、活動に関する報告も、短いものですが止むことなく届くのです。
ヘイトスピーチ反対集会や、人びとの憲法について考える対話セミナーを開催したこと、紅茶農園の子どもたちに日本語を教えてくれるボランティアはいないだろうかという相談(ご関心ある方はAHIまで)もありました。

2022年2月 ヘイトスピーチ反対集会の様子

2022年2月 人びとの憲法について考える対話セミナー。同じくAHIの元研修生ハーマンさんをスピーカーとして招いたとのこと(写真はハーマンさん)。

そして、
いつも彼のメールの始まりか終わりにある文章があります。
それは、「次のAHIのプログラムはいつですか?」
AHIではコロナ以降、元研修生たちを対象としたオンラインで学び合うセッションやプログラムを始めています。
参加しても発言することは少ないのですが、AHIの仲間と連なる場を持つことが、彼の励みになっているのかもしれません。
ミャンマー、アフガニスタン、スリランカ・・・。
必死に自分と自分の家族を守り、同時により弱くされた人たちとともにあろうと苦悩し奮闘する、研修生の姿を目の当たりにして、
返す言葉を失いながらも、彼らが力を得られる場づくりを、もっと進めていかねばと、思う日々です。

職員 清水