本当に最後のいちご
私の実家の隣の家は、もう何十年もいちご農家をされてきました。
温室ですから、クリスマス前から赤いいちごの出荷が始まり、
露地物が出始めるこの頃に、出荷を終えます。
いちごの苗?本体?木?(ではないですよね)を抜いて、
土を調え、冬に向けて苗を育てるなどの、次の収穫時期に向けての
作業が始まります。
お隣のおじさんは、80代後半。ご夫婦で作業をしてこられました。
数年前から、「来年はできないかも」とおっしゃってましたが、
それでも、ご自分たちの健康を感謝しながら、継続されていました。
80歳を超えても、ずっと現役で、畑作業をしてこられた方ならではの
しなやかな筋肉をされています。
私のクルマを見つけると、「みっちゃん、いちご、いるかん?」と
声をかけてくださいました。
いつも段ボール箱にいっぱいもらってきて、
AHIのブログでも、何度か登場してきました。
ですが、今年の始め頃に、おばさんが足を悪くされ、
要介護となりました。
デイサービスに通うようになり、食事も宅配を頼んだとのこと。
週末には娘さんや息子さんが来て、いろいろしてくれているようです。
でもデイサービスの送迎のたびに、家に戻ってきて対応しないと
いけませんし、老人向けの食事は、おじさんにはとても足りないとのこと。
3月頃、気温が高くなってきて、いちごの出荷量が増えてきたら、
忙しすぎて、おじさんの表情が消えていました。
疲れが溜まっているのを感じ、少しでも仕事を減らせないかと
かつてはいちご農家だった人をパートで頼んだらどうかと、
母を通じて、話したこともあるのですが、これまでやったことの
ないことに挑戦するだけの余裕もなかったようです。
それでも、おじさんは体調を崩すことなく、今シーズンを乗り越え、
いちごの苗?を抜いて片付けたとのこと。
それでもまだりっぱないちごがなっていたのを、そのまま捨てて
しまうのがしのびなくて、収穫したところに、私を見つけ
「みっちゃん、いちご、いるかん?」と声をかけてくださいました。
「わあ、ありがとうございます!!」とおじさんの作業場に行き、
いただいてきたのですが、「これが本当に最後のいちごだから」と言われました。
もう来年はやらないと決めているとのこと。
「二人でやってきたことは、一人になると、その半分もできないから」
おじさんが別れ際に言われた言葉です。
大切な人生の真実を教えてもらったように感じています。
職員はさだ