世界民衆会議 People's Health Assembly ( 2018年11月@バングラデシュ)では、40年を経たプライマリヘルスケア(PHC)の意義と重要性があらためて熱く議論された。
「世界貿易が人びとの健康を脅かす」と題して、第4回世界民衆保健会議(2018年11月)の報告を中心に、学習会を2019年1月26日に持ちました。
講師は、元職員の宇井志緒利さん(立教大学教員)職員を含め30名の参加。概要は下記の通りでした。

  • 2018年11月バングラデシュで

2000年を第1回とする第4回世界民衆会議(People’s Health Assembly PHA4)がバングラデシュで開かれ、世界73ヶ国から約1,400名の参加があった。第1回(2000年)の開催を契機として、人びとの健康のために活動する世界各国のNGOや関係者のネットワークとしてPeople’s Health Movement(PHM)が発足し、この間2005年、2012年に後2回の大会を経て今回となった。

  • 1978年から40年 

保健医療分野の世界的な動きとして大きな意味を持つアルマアタ宣言が出されたのは、1978年。それまでの治療重視の方向から、予防に重点を置き、かつ住民の参加の必要性をうたう「プライマリヘルスケア」という概念と方法論が打ち出された。また人びとの健康を守るためには、政治的意思が不可欠であることも含められた。
その宣言から40年。進展や改善がみられる一方で、停滞する面、あるいは一層脅威が大きくなった面もある。WHOは、2018年10月カザフスタンのアスタナにおいてアルマアタから40周年記念会議を開催し、「アスタナ宣言」を発表した。
★アスタナ宣言の宣言文→英文は Declaratio of Astana
和訳(国立国際医療センターによる)は 2018PHCアスタナ宣言日本語訳byNCGM

  • PHMの動き

アスタナ宣言に対して、PHMは自らの立場から "Alternative Civil Society Astana Statement on Primary Health Care" (プライマリヘルスケアに関するもうひとつの市民社会によるアスタナ声明)を出し、目下賛同者・団体を募っている。その中で下記のような指摘がされている。
★オルタナティブアスタナ宣言 英文 → alternative CS astana statement on PHC
和文(宇井志緒利さん・AHI訳)→ Alternative Astana 和訳
・プライマリヘルスケアには、社会公正の視点が強く打ち出されている。今日、大きな健康格差が存在する現実を前にその構造的要因をより明確にする必要がある。
・その人の社会的な立場や状況に関わらず、誰にとっても利用な可能な保健医療サービスの提供を可能にするのは、基本的な人権を守る立場から政府の責任であることを強調すべきである。

  • 東アジア経済連携協定に対する声明

    昨年11月のバングラデシュの会議では、参加者から各国の状況や取り組みが発表され、同時に、各地域での重点的に取り組む必要がある課題が議論された。東アジア地域では、東アジア経済連携協定(Reginal Comprehensive Economic Partnership RCEP)に関する問題が取り上げられ、それが持つ人々の健康を脅かすものになることがないよう声明が出された。重要課題とされたもののひとつは、薬剤の特許期間で、現在20年であるのを₅年延長させようという動きがある。次回のRCEPの会議が2019年2月22日にインドネシアで開かれるのをまえに、声明への賛同者を募っている。
★RCEP反対声明文(英文)は RCEP sign on
非公式和訳は RCEP反対声明和訳
●学習会の中での議論 下記のような点が出された。
*薬の特許期間について
創薬のための研究・開発費を考えるとどれくらいが妥当なのか、またどういう病気に対する薬であるか(先進治療のためのものかどうか)などの論点が関係するだろう。
*薬剤耐性
抗生物質がきかない多剤耐性菌が日本を含む世界規模で問題になっている。薬を大量に使うことがこの問題を加速させる一方、グローバルな人の移動が大きくなっていることもこの問題に関連しているだろう。
以上  2019年2月23日記 AHI 林