政府「SDGsアクションプラン2021」発表に関するSDGsジャパンの見解

12月21日に日本政府がまとめた「SDGsアクションプラン2021」に対して、SDGs市民社会ネットワークがその見解を発表しています。ぜひご一読!
以下、ウェブサイト:https://www.sdgs-japan.net/single-post/action-plan-kenkai からの転載です。
<見解のPDFはこちら>
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政府「SDGsアクションプラン2021」発表に関するSDGs市民社会ネットワークの見解
一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク 共同代表理事 大橋 正明 三輪 敦子
12月21日、日本政府「SDGs推進本部」の会合が開催され、本年の「ジャパンSDGsアワード」の受賞者が発表されるとともに、2021年度の日本政府のSDGsに関わる行動計画をまとめた「SDGsアクションプラン2021」が決定されました。
「SDGsアクションプラン2021」には、これまでの政府のアクションプランと比較して、いくつかの新しい点があります。まず、これは、2019年12月に改定された新しい「SDGs実施指針」の下で策定された初めてのアクションプランです。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大という新たな状況を反映した初めてのアクションプランです。
私たちは、この「アクションプラン2021」において、感染症・新型コロナ対策が新たな柱とされていることを歓迎します。一方で、社会、経済、環境の諸課題に統合的にアプローチし、「続く世界」に向けた変革を起こし、SDGsの理念に則ってコロナ後の「より良い未来」を創造するためのアクションプランとしていくためには、各取り組みによって実現すべき相乗効果の明確化や、達成すべきゴールの設定を始め、さらに踏み込んだ計画が必要であると考えます。
よりよいアクションプランの策定のためには、性別、年齢、障害等を含む「細分類されたデータ」の収集・分析と幅広い共有、バックキャスティングに基づいた日本政府による「2030年目標」の設定とギャップ分析が必要です。貧困・格差の解消、ジェンダー平等の実現、ユースが直面する課題への取り組み、科学技術イノベーションの導入における法・倫理・社会的側面への対応などに、より高い優先順位をつけることも、SDGs達成には不可欠であり、計画に盛り込む必要があります。
以下、具体的に示します。
(1) 感染症・新型コロナ対策をSDGsへの取り組みの新たな柱としたことを歓迎します。
私たちは、SDGsを新型コロナ対策の指導理念として位置づけ、「持続可能なポスト・コロナ社会」に道を開いていく必要がある、と主張してきました。「アクションプラン2021」において、この主張が取り入れられ、「次なる危機への備え」も含めて新たに柱の一つとなったことを歓迎します。
同時に、新型コロナのパンデミック下にあっても、人々の「命」が守られ、「生活」が守られ、次世代が「未来への希望」を持てるよう、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」(ゴール3 ターゲット3.8)の「誰一人取り残さない」保障に向けた保健医療及び社会保障政策の重点化にとどまらず、教育(ゴール4)、人間らしい仕事と雇用(ゴール8)の保障と、貧困の根絶(ゴール1)、格差の解消(ゴール10)への着実な前進を求めます。その際には、パンデミックが露わにした「取り残された」立場にある多くの人々や、第一線で奮闘している人々の声が、「ガバナンス、参加型意思決定」(ゴール16)に則って、具体的に日本のコロナ対策に反映される必要があると考えます。
(2) 社会・経済・環境に統合的にアプローチし「続く世界」を創造するというSDGsの理念に則った実施体制が必要です。
そのためには、グローバル指標を含む必要な指標に関連して、性別、障害、年齢等を含む細分類されたデータ(disaggregated data)を収集・分析し、必要な社会的・政治的配慮を踏まえつつ、なるべく幅広く共有した上で、多様なステークホルダーによるパートナーシップを形成し、幅広い国民・市民との双方向的で効果的なコミュニケーションに基づいて「誰一人取り残さない」ためのSDGs政策を策定・実施・評価することが必要です。そのことにより、SDGsの進捗において日本がどのような状況にあるのかを評価し、効果的に資金と資源を投入することが可能になります。データに基づく政策策定の重要性は新型コロナにおいても明確になっています。また、2019年に改定された「実施指針」を踏まえ、「バックキャスティング」の考え方を踏まえた2030目標を設定し、政府によるSDGsの進捗評価に道筋をつけていくことが必要です。
(3) 科学技術イノベーションやその導入にあたっては、倫理・法・社会的側面に関わる検討を強化し、真に持続可能な社会・経済・環境の形成に資するものとする必要があります。
ビジネスとイノベーション、および地方創生は、以前から政府のSDGsアクションプランの中で、それぞれ重要な柱として位置づけられてきました。「第2の柱」では、持続可能な循環型社会が「バイオ戦略」「スマート農林水産業」と結び付けられていますが、これはむしろ、地域の自然資源の活用による生業(なりわい)の形成や農業・林業と福祉の連携といった、各地で行われている、地方自治体と多様な住民の連携・協働に基づく事業とこそ結び付けられる必要があります。また、ここに女性の意思決定への参画を始めとするジェンダーの視点を組み込むことは、ESG投資の重視する環境、社会、ガバナンスの視点を強化するものと考えます。気候変動に関しては、2050年温室効果ガス排出ゼロへの取組の着実な実施とともに、2030年の目標再設定、世界の温室効果ガス削減への貢献、誰一人取り残さない観点からの適応策も求められます。防災・減災に関しては、「災害弱者」の目線に立ったソフト面での一層の対策の実現、またそのための多様な市民との対話が求められます。
(4) SDGsに即した貧困・格差の解消、ジェンダー平等の実現、ユースへの政策的な取り組みの強化を行う必要があります。
「第4の柱」では、「一人一人の可能性の発揮と絆の強化」がうたわれています。格差が大きく深刻な貧困のある社会では、一人一人が自らの可能性を開花させることは困難です。日本での2020年10月の自殺者数からも推察できるように、新型コロナによって、内外の多くの人々が明日に希望を見出すことができない状況に置かれています。特に女性への影響は深刻です。実施指針改定版で新たに重点分野に加えられた「ジェンダー平等の実現」(ゴール5)に向けた政策・施策の充実が必要です。政府には、貧困・格差問題をSDGsの内外における最優先課題とすることと、社会・経済のセーフティーネットとしての社会福祉・社会保障政策とODAの強化をSDGs政策に位置付けることが必要です。さらに、ユース世代の多くが、すでにSDGsに向けた取り組みを始めています。認知度の向上に加え、ユース世代のSDGsへの主体的な取り組みへの支援が必要です。
毎年7月に行われるSDGs進捗評価のための国連「ハイレベル政治フォーラム」(HLPF)において、日本は2021年に他の40か国とともに「自発的国別レビュー」(VNR)の報告国となります。私たちSDGs市民社会ネットワークは、政府と実施指針改定版に記載されている11のステークホルダーが共にVNRを作成、発表し、そのことにより日本がSDGsの達成に十分に貢献するよう求めます。
以上
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