ミャンマー:クーデターから10ヶ月~日本政府への共同声明に賛同しました

ミャンマーの状況は、日を追うごとに深刻さをましています。
国軍の圧政は続き、市民の死者は1300人を超え、拘束や暴力、少数民族地域への攻撃等、人権侵害は常態化しています。他国と接する国境近くでは避難民がつめかけ、支援もないまま困窮した状態にあります。加えて、経済の低迷、コロナ感染拡大など、人びとの生活や命は脅かされる一方です。都市部の中間層の貧困化も、増しています。
その一方で日本を含む国際社会は、人びとを支援する手も、また解決に向けた効果的な手も打てないまま、すでに10か月を迎えようとしています。
AHIではこれまで、日本政府に状況打開に向けた具体的な行動を求めるいくつかの声明に、賛同してきました。この度、12月1日に新たに出された、メコンウォッチ等5つの団体が呼びかける下記の声明にも、名を連ねさせていただいています。
ミャンマー市民の間に、国際社会、とりわけ日本への諦めが増していると聞きます。
ミャンマーの研修生たちひとりひとりの顔、その研修生たちがともに活動する地域の人たちひとりひとりの命を思いながら、日本が、私たちが、今やれることをしっかりとしなければ、と、強く思います。
(職員 清水)
*写真は2018年12月、ミャンマー・ラーショーにて撮影
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2021年12月1日
【要請書】
ミャンマー:クーデターから10ヶ月
日本政府は国軍との経済的関係を断ち切ってください
PDFはこちらから→http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20211201.pdf
2月1日にミャンマーで国軍によるクーデターが発生してから、10ヶ月が経過しています。市民に対する国軍の残虐な弾圧は、変わらず続いています。国軍が指揮する「治安部隊」の暴力により犠牲になった方たちは、確認されているだけでも11月23日時点で1,290名にのぼります。拘束された、または逮捕状が発行された人は延10,000名を超えました。10月に国軍がいう「恩赦」によって、5,600名が解放されましたが、全員がそもそも拘束される必要のない人々であった上に、まだ2,000名近い方が拘束されたままです。現地の団体によれば、解放された人のうち110名がすぐに再逮捕されています 。
国連人権理事会が設置した「ミャンマーに関する独立調査メカニズム(IIMM)」は2021年7月、国軍を含む治安部隊がクーデター以降、殺人、迫害、恣意的拘束、性暴力、強制失踪、拷問など「重大な国際犯罪を犯している」と述べています 。また国軍は拘束者に対し、組織的な拷問も行なっており、10月28日のAP通信は国軍の拷問は、眠らせないこと、食べ物や水を与えないこと、電気ショック、過酷な殴打、女性に対しては性的な暴力を示唆することで恐怖を与える、といった手法が共通していると報じています 。
このような国軍の恐怖支配によって、ヤンゴンなどは表向き平静な状態になっています。しかし、国連によって人道支援等の対象と見なされる状態の人は約300万人にのぼり、クーデター以降、チン州、カチン州、カヤー州、サガイン管区域、タニンダーリ管区域等で、推定約23万4,600人が国内避難民となっています 。
よく知られているように、国軍は2017年8月からの数週間にわたりラカイン州でロヒンギャ・ムスリム住民が暮らす数百の集落を襲い、殺害、レイプ、恣意的拘束、民家への大規模放火を行なっています。国連人権理事会が設置した国際独立事実調査団(IIFFMM)はこの襲撃に関する報告で、国軍による人道に対する罪のほか、戦争犯罪に相当する国際人道法違反があったと述べています 。この事件の以前から、国軍は特に少数民族居住地域で、重大な人権侵害を繰り返してきました。
日本政府(茂木前外相)は7月30日の記者会見で、ミャンマーに関しASEANの取り組みを支援し、特にASEANから「ミャンマーへの特使の派遣について、取組を支援していきたい、後押しをしていきたい」 、と発言しましたが、その後、ASEANとミャンマーの間で合意が成立しない中、EU、米国、英国、韓国等、9国・地域が「ミャンマーがASEAN特使と建設的に関わることを求める」等とした10月の共同声明には 、日本の名前はありません。日本政府は、日本国内では積極的な対応を取るように発言しながら、ミャンマーを実効支配する国軍に対する国際的な働きかけに参加していないように見えることに、私たちは大きな懸念を抱いています。
現時点で日本は、政府開発援助(ODA)では、累計で9,685億円の有償資金協力(円借款)の借款契約をミャンマーと結んでいますが 、2020-2021年のミャンマーの経済成長率はマイナス18%と予想されています 。現状では、ミャンマーの市民が円借款という莫大な負債を、厳しい経済状況の元で背負うこととなります。ミャンマーへの大量の開発資金の流入は、2011年からの民政化に伴い、日本の財務省の強いリーダーシップにより、過去の国際金融機関の債務を日本が一時的に肩代わりし、また3千億円近い債権を放棄したことで実現したもので 、日本には、ミャンマーの債務増加に対して、大きな責任があります。
8月にも要請した通り 、ODAを所管する外務省と、実施機関である国際協力機構(JICA)は、借款契約を締結済みであるものの入札に至っていない案件については、直ちに一切の手続きを停止すべきです。また、入札が終わり実施中の案件も貸付を停止し、そうした措置によって不利益を被る当該事業に関連する企業への補償等、必要な経費がどれほどになるのか精査、公表し、どのような処理が可能かを公に議論すべきです。また、バゴー橋建設のように、国軍系企業を利する事業は直ちに停止し、国軍との経済的関係を断つ方策をとり、その事実を公表してください。
財務省所管の国際協力銀行(JBIC)が融資する、ミャンマー陸軍が所有するとみられる土地で建設中の複合施設、Yコンプレックスについては、現状、事業地賃料が国軍の利益となる怖れが非常に強いため、関連企業への融資を停止してください。
Yコンプレックスを始めとする、国土交通省所管の官民ファンドである海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)がミャンマーで融資・出資・保証をしている事業 への支援は一旦全て停止し、国軍との経済的関係を断つ方策を取ってください。JOINの資金のほとんどは国税を原資としており、Yコンプレックス事業への参画を通し、日本の納税者も国軍を利する経済活動に巻き込まれる強い懸念があります。Yコンプレックスへの出資は、直ちに引きあげてください。
また、経済産業省は、イェタグン・ガス田開発事業の権益を有しています。同ガス田は、技術的な問題で4月から一時停止していましたが、10月にはガス田の操業が再開されており、国軍の統治下に置かれているミャンマー石油ガス公社に収益をもたらします。また、現状では天然ガスに関する多額の税収を、国軍が自由に使用することが可能です。民主的な状況が回復するまで、イェタグン・ガス事業に伴い発生する支払金を国外にプールするなどの方策の確立に、日本政府は早急に取り組んでください。加えて、これらが確立するまでは操業を停止するよう、オペレーター企業へ働きかけてください。
これまでの経済支援や公的資金による投資は一旦全て見直すことが急務です。ミャンマーはティラワ経済特別区を筆頭に、日本が官民を挙げて行ってきた事業が多く、日本政府には企業進出を促した責任もあります。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえ、ミャンマーに進出している企業に人権デュー・ディリジェンスを行うことを求め、その後の対策に協力すべきです。
また、喫緊の課題として、ミャンマー市民が切望している食料援助等の純粋な人道支援を、ミャンマー国軍を通さない形で継続的に実施してください。
呼びかけ団体:
アーユス仏教国際協力ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
日本国際ボランティアセンター(JVC)
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
メコン・ウォッチ
賛同 30 団体:
(特活)アジア・コミュニティ・センター21
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
NPO 法人 AM ネット
NPO 法人 APLA
NPO 法人アジア女性資料センター
アジア開発銀行福岡 NGO フォーラム
アジア太平洋資料センター
アトゥトゥミャンマー支援
カトリック大阪大司教区 社会活動センター・シナピス
さっぽろ自由学校「遊」
シェア=国際保健協力市民の会
ピースボート
ふぇみん婦人民主クラブ
ベリスメルセス宣教修道女会
一般財団法人 アジア・太平洋人権情報センター
一般社団法人平和村ユナイテッド
関西 NGO 協議会
公益財団法人 アジア保健研修所
在日ビルマ市民労働組合
地雷廃絶日本キャンペーン
特定非営利活動団体 地球の木
特定非営利活動法人 NGO 福岡ネットワーク
日本カトリック正義と平和協議会
日本ビルマ救援センター
認定 NPO 法人ヒューマンライツ・ナウ
追加賛同団体(12/2 時点):
聖心侍女修道会社会司牧チーム
パプアニューギニアとソロモン諸島の森を守る会
特定非営利活動法人アフリカ日本協議会
他 2 団体
連絡先:
特定非営利活動法人 メコン・ウォッチ
〒110-0016 東京都台東区台東1-12-11青木ビル3F
info@mekongwatch.org
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以上