少数民族(テリング)の人々のリーダーシップ育成

少数民族テリングの人々に寄り添う

2004年12月26日津波 (*)によって甚大な被害が生じました。スリランカ西部ニゴンボ近くの海岸部も被害にあいました。そこに住んでいたテリングと呼ばれる少数民族の人たちはキャンプに避難したましたが、その当初から差別に直面しました。テリングの人びとのことを好ましく思わない人たちもいたからです。そして政府からの認知がないということが、彼らが安全と保護を受けるための障害となっていました。
 
(*)スマトラ沖津波 2004年末にインドネシアのスマトラ島沖で発生した大規模な津波は、アジア各国の沿岸部を襲った。スリランカでも東部・南部の沿岸部を中心に4万人が亡くなり、100万人以上の被災者が出た。
 

災害によってあぶりだされた少数民族テリングの人々が抱えていた不安定な社会的立場

彼らはスリランカにおいて、テリングというひとつの民族集団として政府に認められていません。また人々の意識も、スリランカで多数を占めるシンハラ人社会の外に住む者としてみなされています。したがって彼らの多くはまちのはずれに無許可で住んでいました。認知されていないことから、同じ被災者でありながら、被災者用のキャンプを追い出されたり、支援物資を受け取れないという事態が生じたのです。
 
2009年にAHI研修に参加したスリランカのNGO団体 ジャナワボダ・ケンドラヤのマリーさんは、どこからも救援を受けられない彼らの窮状をあらためて知ったことで、リーダー育成などをして、彼ら自身が協力して自分たちの状況を改善していく素地を作ることが必要だと考えました。
 
 

テリングとは?

テリングとは、19世紀にインドからスリランカへ移住したカーストの低い人たちで、スリランカ中部の茶農園の労働力となったタミルの人たちに対し、都市部に住みつき占いや清掃などを生業にした人たちです。 現在は、その4代目以降にあたる人たちがスリランカ全土で約1万人いるといわれています。彼らはいくつかの地域に固まって住んでおり、冠婚葬祭には互いに行き来し、テリングとしてのつながりを維持しています。固有の民族集団として認められておらず、今なお社会の中で不利益を被ることもあります。

目指すところ

少数民族テリングの人々があらためて自分たちのアイデンティティ を確かめ、かつ他の人々と同様の権利を獲得すること。各地に散らばるテリングの人びと自身がつながり、助け合える組織を作ることを目指します。

取り組み

対話を通して人々の意識を変え一人ひとりの中にある潜在的なリーダーシップを引き出すことを基本とし、
主に

  • 女性グループのグループ形成
  • リーダーの養成
  • メンバーによる保健活動

などを行います。
 

協働パートナー団体とメンバー

ジャナワボダ・ケンドラヤ(JK)=民衆意識化センター= は、スリランカ西部の海岸部ニゴンボに拠点を置NGOです。海岸近くに住む人びとがその土地の権利を主張して結束したのに対して、それを支援しようと30年ほど前に生まれました。 津波被災地の復興活動や平和づくり、女性への支援と育成、村保健委員会の組織化などを行っています。このプロジェクトでは、テリングの人びとの、自らの自己認識を確認し、助け合える組織を作ること。さらには市民や政府の役職にある人々に働きかけていく闘いに寄り添う活動をしています。
 

現地の様子・レポート

アジアの健康 2012年 8月号 「スリランカの少数民族テリングのリーダーたちの底力」
アジアの健康 2014年 4月号 「多彩なスリランカに生きる人々」