私が出会ったダリットの人たち②

写真:ムルカムパトゥ村の女性グループメンバーと(2016年4月)
表題のお話しをする前に、ちょっと別の話をきいてください。
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昨日、「スピリチュアリティと『しあわせ学』」という講演会に参加しました。
講師は3人。インド北部のヒマーチャル・プラデーシュ州の活動家と、ブータンの活動家、
そして日本の研究者。
そこで「『こころの幸せ』には自己受容が大切」と語られ、私は次のように質問しました。
「他者から抑圧され続け、極度の貧困にあって、『自己肯定』『自己受容』という言葉の
意味が理解できないような人たちの中に、自己肯定感を育て、自己受容を促していくには、
どうすればよいのか。実際の経験に基づいた考えを聞かせてください」
 
3人の答えをそれぞれ要約すると、次のようでした。
■ とても難しく、長い時間がかかるし、相手だけでなく、自分自身に挑戦することにもなる。
挫けないこと、成果を急がないことが大切。
■ 政府が『投入しても益がない』と見捨てた村で、私たちは活動することにした。
村人たちも『自分たちには何もない、何もできない』と言っていた。
私たちは具体的な活動を始める前に、村人との信頼関係づくりに努め、それに9か月を費やした。
しかし確かな信頼関係ができたおかげで活動はうまくいき、今ではモデル村とされている。
信頼関係を築くために大切なことは、忍耐、そしてまずは自分から相手を信じること。
■ 児童養護施設に暮らす「自分には価値がない」と言った子どもの例が近いと思う。
どんな小さなことでも、その子にできることを見つけては褒めるようにしたことが、
自己肯定感を育む助けになったと思う。だから「ひたすら寄り添うこと」が大切だと思う。
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さて、本題の「私が出会ったダリットの人たち②」です。
 
私はダリットの人たちに思いを馳せて、上記の質問をしました。
そして、2016年4月に訪問した元研修生フローさんの活動地・ムルカムパトゥ村の
女性グループの例から、フローさんならどう答えるかを考えてみました。
 
フローさんも「忍耐、信じること、寄り添うことが大切」と言うでしょう。
でも彼女が4人目の講師としてあすこにいたら、仲間づくりの大切さや、
基本的人権の普遍性について教え伝えることの大切さを付け加えたのではないでしょうか。
 
ムルカムパトゥ村には、160世帯のダリットの家族が暮らしています。
同じような境遇にある人たちが思いを共有しあい、その中から共通の課題をみつけ、
一緒に課題解決に取り組むよう、フローさんはファシリテートしていきました。
仲間がいるからこそ困難なことにも挑戦できます。
そこで小さな成功体験を積み重ねていくことで、一人ひとりが自信を得ていくことができます。
そして、それをみた他の人が「自分もああなりたい」「自分にもできるかもしれない」と
思うようになります。
 
10年前、ムルカムパトゥ村にできた女性グループは一つだけ。
月10ルピー(約16円)のグループ貯金をはじめ、1年後にはグループ内でのローン貸付を
はじめました。
グループのメンバーたちは少しずつ生活を良くしていき、
それをみてグループ貯金をしたいと思った人が、新しいグループがつくっていきました。
今では8つのグループがあります。
 
 

 
 
 
 
 
 
 
↑ ムルカムパトゥ村の女性リーダー
そして、今では女性たちはNGOがいなくても、問題があればみんなで話し合い、アクションをとる
ことができます。例えば、
デング熱のウイルスを媒介する蚊の発生を抑えるため、水たまりを除去したり、
カーストの人による違法な酒販売をやめさせたり。
 
近くにゴミ捨て場の建設が計画されたことに反対して、計画を撤回させたこともあります。
健康の権利や、良好な環境の中で生活を営む権利をちゃんと知っていて、それを求めたのです。
 
 
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「ダリットとして生きる ~インド社会で虐げられてきた人々の声に聴く~」
〝厳しい差別を受けながらも、彼らがどのように声をあげ、権利を獲得するに至ったのか。
 ダリット出身のカリさんが、自らの体験や30年以上にわたる活動からお話しします" 
ご参加をお待ちしています! 
スケジュール等はこちら➡http://ahi-japan.jp/press/001/
 
職員Y